闇を見抜く眼—産廃業界のブラックリスト幻想 2000年前後
2000年前後、日本の産業廃棄物処理業界は、制度改革の表舞台と、深刻な構造的問題を抱えた現場との間に大きな溝があった。循環型社会形成推進基本法や家電・建設リサイクル法が施行され、ISO14001取得が企業の社会的信用の証とされたが、最終処分場不足と中間処理施設の能力限界は解消されず、受け入れ先を失った廃棄物は不法投棄や不適正処理の温床となった。許可業者でさえ裏でアウトロー業者とつながり、最終処分場に届いたはずの廃棄物が翌朝には消える事例も少なくなかった。企業の環境担当者は「不良業者のブラックリストが喉から手が出るほど欲しい」と漏らしたが、業界では優良と不良の線引きが曖昧で、老舗業者でも不法投棄現場に名が出る危険があった。当時は電子マニフェスト制度や廃棄物トレーサビリテ
ィ構想が普及途上で、紙のマニフェストの空伝や偽書類が横行し、RFIDタグやGPS車両追跡技術も実験段階に過ぎなかった。制度疲労と技術不足が重なり、「安全な処理を保証する術がない」という現場の無力感が蔓延していた。このブラックリスト幻想は、情報の非対称性と不信感、そして制度と技術の未成熟が生んだ象徴的な叫びである。
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