**浄化の光と地下の影―2000年代初頭の歌舞伎町風俗変容**
2000年代初頭、歌舞伎町は浄化作戦の号砲とともに、大きな変貌を遂げた。2003年4月、石原慎太郎都知事の主導で警視庁が行った一斉摘発は、韓国系や中国系の店舗型風俗店、デートクラブ、違法客引き、さらには暴力団事務所までを標的とした。その背景には、2002年9月に発生した「パリジェンヌ事件」、中国系組織による暴力団幹部射殺と、それに続く報復の連鎖があり、街の治安は社会問題として取り上げられていた。
浄化作戦は表通りからネオンを消し、合法的に営業していたヘルス店やキャバクラ、ラウンジも壊滅させた。その結果、風俗業は店舗型全盛から地下化・多様化の時代へと移行し、マンションの一室で営まれる無店舗型エステや、ネットカフェを拠点とした違法営業が広がった。この空白を埋めたのがスカウトであり、街頭で女性に声をかけて風俗店へと斡旋し、紹介料や売上バックで稼ぐ彼らの活動は一層活発化した。
一方で、バブル崩壊後の不況と非正規雇用の拡大は、若い女性たちを夜職へと誘った。地方から上京し、学費や生活費を稼ぐために働く者、ホストに入れ込み借金を抱える者も少なくない。短期間で高収入を得られるという魅力は、危険や搾取の可能性と背中合わせであった。
歌舞伎町の風俗は、この時代に治安対策、経済状況、そして都市文化の変化が交差する舞台となった。浄化の光に照らされた影は、地下へと潜り、なおも脈動を続けていた。
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