環境 富山市に芽吹く循環の知恵―廃プラスチックリサイクルモデル 2002年
2002年当時、日本国内の廃プラスチック排出量は年間約997万トンに達していましたが、再生利用されていたのはわずか139万トンにとどまり、多くは焼却や埋立てに依存していました。最終処分場の逼迫や焼却時のダイオキシン発生が深刻化する中、循環型社会形成推進基本法(2000年施行)の理念に沿った実効的なリサイクルモデルが求められていました。その先駆けとして注目されたのが富山市エコタウンの廃プラリサイクル事業でした。
このモデルの核心は「樹脂の単一化」「歩留まり向上」「カスケード利用」の三本柱にありました。技術的には、近赤外線(NIR)分光を用いた自動識別・選別機が導入され、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)といった主要樹脂を高精度で分別可能にしました。また静電選別や比重分離を組み合わせることで混入異物を低減し、再生ペレットの品質を安定化させました。
粉砕・洗浄工程では摩擦式洗浄機や熱水処理によるラベル・異物除去技術が活用され、残渣を削減することで歩留まりを高めました。さらに脱水・乾燥設備を強化し、再生材の含水率を下げて射出成形や押出成形に適した状態で出荷できるよう工夫されました。これにより従来よりも安定した物性を持つ再生材の供給が可能となり、企業側が利用しやすい市場環境が整いました。
またカスケード利用の考え方に基づき、富山では再生プラを高品質製品に戻すのではなく、土木資材や建築用ボード、パレット、プランターといった比較的要求性能の低い用途に段階的に振り分けることで販路を確保しました。これにより「リサイクル材は使い道が限られる」という課題を逆手に取り、地域産業と結びついた持続可能なビジネスモデルが成立しました。
富山市エコタウンの事例は、先端の分別・選別技術と地域の産業基盤を組み合わせ、循環型社会を支えるローカルモデルを構築した点で画期的でした。この取り組みは後に全国各地のエコタウンや廃プラ高度処理事業の設計指針ともなり、循環技術と産業振興を両立させる先駆例として評価されています。
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