Sunday, August 24, 2025

環境 資本市場に芽生えた倫理の物差し―社会的責任投資株価指数の誕生 2002年

環境 資本市場に芽生えた倫理の物差し―社会的責任投資株価指数の誕生 2002年

2002年、金融情報会社モーニングスターとNPO法人が「社会的責任投資(SRI)株価指数」の開発に着手しました。これは、企業を評価する基準を従来の財務指標にとどめず、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点を組み込んで株価指数を作成しようとする試みでした。当時の日本では「環境報告書」を公表する企業が増えつつありましたが、投資家が直接参照できる形でESGを金融市場に組み込む仕組みは黎明期にあり、国際的な潮流を国内に導入する意義を持っていました。

背景には、欧米で1990年代から広がりを見せていたSRIの動きがありました。米国ではカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が環境や労働問題を考慮した投資方針を打ち出し、英国でもFTSE4Good指数が2001年に創設されていました。こうした流れを受け、日本でも年金基金や機関投資家が「企業の社会的責任」を評価軸に含めるべきだという議論が高まり、SRIファンドの組成も始まりつつありました。

モーニングスターとNPOによる指数開発は、企業の環境マネジメント体制、労働安全衛生、人権配慮、ガバナンスの透明性などを評価項目とし、それを株価指数に反映させることで、投資家に「社会的価値」と「企業価値」を結びつけて提示するものでした。これにより、環境負荷低減や社会的取り組みに積極的な企業ほど投資資金を呼び込める仕組みが生まれ、企業行動を変えるインセンティブとなることが期待されました。

当時の日本はバブル崩壊後の経済停滞に苦しむ一方で、環境ビジネスやCSR活動が新たな成長領域として注目されていました。SRI株価指数の開発は、環境問題を単なるコストではなく「投資の価値」に転換する挑戦であり、資本市場を通じて社会変革を後押しする新たな一歩となったのです。

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