環境 廃棄物の定義をめぐる攻防―制度見直しが拓く循環型社会の道 2002年
2002年、中央環境審議会は廃棄物・リサイクル制度の見直しに関する報告書をまとめ、廃棄物の定義や制度運用に関する大幅な改革を提言しました。当時は不法投棄やリサイクル偽装が社会問題化しており、廃棄物と有価物の区別を悪用した不適正処理が横行。例えば「リサイクル資源」と称して本来処理すべき廃棄物を野積みする業者が後を絶たず、環境省と経済産業省、産業界の間で対立が激化していました。
報告書は、従来の「不要物のみを廃棄物とする」定義を拡張し、「不要物であるリサイクル可能物」も廃棄物に含めるべきと明記しました。これにより、グレーゾーンに位置していた廃棄物が明確に規制対象となり、悪質業者の抜け道を封じる狙いがありました。加えて、廃棄物が広域的に移動する際の許可手続きを簡素化する「広域指定制度」や、環境大臣の認定に基づき施設の許可を不要とする「再生利用認定制度」の拡大も提言され、循環型社会に資する柔軟かつ効率的な制度設計が議論されました。
当時、日本では循環型社会形成推進基本法(2000年施行)が制定され、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法が本格運用に入り、リサイクル政策の枠組みが急速に整備されつつありました。しかし制度が整った一方で、不適正処理や不法投棄は依然として深刻で、制度と現場の乖離が問題視されていました。この報告は、そうした矛盾を是正し、廃棄物行政を「規制強化と合理化」の両面から立て直す試みでした。
この見直しは後の法改正につながり、循環型社会の基盤を固める契機となりました。背景には環境意識の高まりだけでなく、経済停滞の中で廃棄物処理コストを抑えつつ資源循環を促進しようとする時代的要請があり、日本の環境政策が新たな段階へと進む転換点を示していたのです。
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