Friday, August 8, 2025

**大地を巡るエネルギーの環 山口県周南市の挑戦―2003年5月**

**大地を巡るエネルギーの環 山口県周南市の挑戦―2003年5月**
2000年代初頭、日本は京都議定書の発効を目前に控え、温室効果ガス削減と再生可能エネルギー導入の加速が求められていました。その潮流の中で、山口県周南市の地域循環型農業とバイオガス発電は、地方から生まれた先駆的な試みでした。畜産廃棄物や農業残渣をメタン発酵させて生まれたバイオガスは、発電機で電力へと変わり、地域の暮らしを支えました。化石燃料を置き換えるだけでなく、廃棄物処理の負担を軽減し、循環の輪を広げたのです。
発酵後に残る消化液は、高い肥効を持つ資源として農地に戻されました。化学肥料の代替となり、製造過程で生じる環境負荷を抑えつつ、土壌を健やかに保つ役割も果たしました。さらに発酵の過程は、畜産施設周辺の臭気を和らげ、糞尿の流出を防いで河川を守りました。
当時、このようなバイオガス設備は国内ではまだ珍しく、欧州のドイツやデンマークの事例を参考にしながら、日本の地域事情に合わせた技術が導入されました。嫌気性発酵槽の温度制御、ガス精製、発電機、固液分離などの技術が組み合わされ、大地と人の暮らしをつなぐ新しい循環の形が描かれたのです。

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