Thursday, August 14, 2025

英国の水素エネルギー計画-2007年から2020年代までの発展

英国の水素エネルギー計画-2007年から2020年代までの発展

英国政府は2007年、水素を基盤とする新しいエネルギーインフラの構築に着手しました。この計画は温暖化ガス削減を目指し、交通分野での水素燃料電池車の導入を推進することを目的としていました。当時の目標は2030年までに国内交通機関の20%を水素燃料に転換することでした。同時に、産業部門でも水素利用を拡大し、既存の天然ガスインフラを水素対応に改修する取り組みが進められ、再生可能エネルギーを活用したグリーン水素の普及が期待されていました。

2010年代の進展
2010年代に入り、英国は水素エネルギーの実用化に向けた具体的なプロジェクトを多数立ち上げました。2015年には「ハイドロジェン モビリティ ヨーロッパ」計画が始まり、英国を含む欧州各国が連携して水素ステーションのインフラ整備を推進しました。この計画に基づき、英国では2020年までに10か所以上の商用水素ステーションが設置され、ロンドンやバーミンガムを中心に運用が開始されました。

また、スコットランドでは「アバディーン ハイドロジェン ハブ」プロジェクトが進行し、ヨーロッパ初の水素燃料電池バス隊(10台)と水素製造施設が導入されました。これにより、公共交通機関の脱炭素化が一歩進みました。

2018年には、英国政府が「ロード トゥ ゼロ」戦略を発表し、2040年までにすべての新車をゼロエミッション化する計画が打ち出されました。これに伴い、水素燃料車への支援も拡大され、「トヨタ ミライ」や「ヒュンダイ ネクソ」などの水素燃料電池車が市場に投入されました。

2020年代の展開
2020年代に入ると、英国の水素エネルギー計画はさらに加速しました。「テン ポイント プラン」に基づき、2030年までに年間5ギガワットの低炭素水素生産能力を確保する目標が掲げられ、政府は2億4000万ポンドを水素ファンドに割り当てました。グリーン水素とブルー水素の両立を目指し、テサイド地方では「ビー・ピー」社が年間100万トン以上のブルー水素製造プラントを建設中です。また、ハンバー地域では「エクィノール」社の「ハイドロジェン トゥ ハンバー ソルトエンド」プロジェクトが進行し、産業地帯への水素供給を通じて炭素排出量を年間1000万トン削減することを目指しています。

交通分野では、ロンドンを中心に水素燃料電池バスが300台以上導入され、ウェールズ地方でも「ファースト バス」社が水素燃料バスへの全面切り替えを進めています。「ヒュンダイ」や「トヨタ」などの企業が商用車両の供給を強化しており、フリート車両や貨物輸送にも水素技術が活用されています。

課題と展望
水素の製造コストやインフラ整備の遅れが依然として課題ですが、英国政府は2050年までに炭素排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、水素エネルギーをその戦略の中核に据えています。2007年からの取り組みは、英国が国際的な水素エネルギー市場でリーダーシップを確立する基盤を築き、今後もさらなる技術革新と投資が期待されています。

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