ある若手ホストの悲劇―2013年歌舞伎町の闇（2013年）

ある若手ホストの悲劇―2013年歌舞伎町の闇（2013年）

2013年6月、歌舞伎町の「自殺ビル」で25歳の新人ホストが変死体として発見された。この雑居ビルは過去にも関係者の自死が相次ぎ「死の場所」と呼ばれてきた。事件は街の華やかな表層と裏腹に、若者を飲み込む絶望の連鎖を象徴するものであった。背景には、ホストクラブ特有の売上ノルマや指名競争による過酷な労働環境があり、借金を背負ったホストは精神的にも肉体的にも追い詰められていった。とりわけ売れない新人は顧客確保に苦しみ、追い込まれる末に自死に至ることも多かった。さらに2010年代前半の日本社会は非正規雇用や低賃金が若者を不安定にし、夜職に流れる者を増やした時期である。歌舞伎町は一攫千金の幻想を与えたが、実態は搾取と暴力の温床であった。浄化作戦後、街は表面上整備されたが、裏では�
��下化が進み、事件や自殺はむしろ陰で増えた。自殺ビルはその象徴として、きらびやかな都市の影に潜む「若者の消耗と死」を示す記憶となった。