### 環境 自然災害の頻発 ― 21世紀初頭の時代背景を踏まえて

### 環境 自然災害の頻発 ― 21世紀初頭の時代背景を踏まえて

21世紀初頭に入ると、自然災害は単独の現象ではなく連鎖的に発生する「複合極端」として社会を直撃するようになった。熱波が乾燥と山火事を誘発し、その後の豪雨が地表を襲い、洪水や土砂崩れを拡大させる。都市のヒートアイランド現象は気温を押し上げ、硬い舗装面は豪雨を吸収できず、都市型洪水のリスクを高めた。人口密集地ではこれらの影響が重なり、被害の集中が一層深刻化していった。こうした特徴は、気候変動が単なる環境問題にとどまらず都市社会の存続に関わる課題として認識される背景を形作っていた。

その象徴的な事例が2021年前後のカナダ西部である。ブリティッシュコロンビア州では気温が50度に達し、サハラ砂漠を超える酷暑を記録した。そのわずか数か月後、豪雨が同じ地域を直撃し、洪水と土砂崩れが相次いだ。数千人規模の住民が避難を余儀なくされ、道路や鉄道が寸断され物流や経済活動が停滞した。熱波から豪雨へと続く災害の連鎖が、地域社会の復旧能力を上回る速度で進行するという点が当時の大きな特徴であった。

一方、シベリアではツンドラの大規模火災と永久凍土の融解が同時に進行していた。地盤沈下や建設基盤の破壊、冬季の輸送路であるアイスロードの消滅などが現実化し、地域社会の基盤そのものが揺らいだ。研究では永久凍土の半分以上が今世紀中に消滅し得ると予測され、そこに眠る膨大な炭素の放出が地球温暖化を加速させると懸念された。地域に暮らす人々にとっては生活の持続可能性が失われ、インフラの再設計を迫られる状況が続いた。

このように自然災害は連鎖的かつ複合的に発生し、被害は単なる環境現象を超えて社会全体の危機へと拡大した。21世紀初頭の事例は、熱波・山火事・豪雨・地盤劣化が相互に作用し、大規模避難とインフラ崩壊を引き起こす「複合極端の時代」がすでに到来していたことを示している。