Monday, August 11, 2025

「創造的進化」と「定向進化」について

「創造的進化」と「定向進化」について

えーとですね、あの、ベルクソンの『創造的進化』、もう一つの「定向進化」という話なんですけれども、全体の流れとしては、有機物と無機物を分け、第二章で動物と植物を分け、第三章で意識と本能を分ける。そして最終的に姿勢を持つ人間という枝ができ、全体像が把握されるという構成です。

編集長に限って言うと、有機物と無機物の区別、つまり有機物・無機物がどのように形態変化していくかの話になります。無機物は機械論と目的論で説明できますが、有機物の形態変化、いわゆる進化は機械論と目的論では説明できないという立場です。

当時(1906年)の進化論は、概して機械論と目的論を足して二で割ったようなもので、進化の実情を十分に説明できないものでした。近年はコンピューターシミュレーションや確率論、エントロピー概念などにより、進化の実情に近い表現も可能になりましたが、当時の数学では難しく、ある意味でベルクソンは数学よりかなり先に進んでいたとも言えます。

そこで当時、検討・批判の対象となった進化論は4つありました。まずダーウィンの「累積的変化」、フリースの「突然変異」、光が進化を一定の方向に導くとする「アイマーの定向進化」、そして「ラマルク主義」です。

さて、この「アイマーの定向進化」についてですが、ポイントは「適応」の意味が2種類あり、「原因」が3種類あるという点です。この説では、光の影響によって同じような結果、似た機能が別系統の生物で実現されたと説明します。光という共通原因で説明できるというのが骨子ですが、ベルクソンはこれに反論します。

第一に、適応には2種類あります。物質は光の刻印を受けますが、繊毛虫類のような原始的な生物は光に反応して発達することは説明できます。しかし、脊椎動物の視神経や神経系が光を浴びただけで発達したとは認めがたい。単純な器官から高度な神経系まで、同じ「光」という原因だけで説明するのは無理があります。光による刻印は「受動的適応」の一部にすぎず、もう一つは「環境への能動的適応」です。脊椎動物の神経系は、環境に能動的に対応し運動するために発達したもので、単に光を浴びた結果とは言えません。

第二に、原因と結果には3種類の関係があります。発端(火薬と爆弾の関係)、衝撃(ビリヤードの球の衝突)、展開(ぜんまいが徐々にほどける)です。さらに原因と結果には質と量の関係があり、必ずしも一対一対応しません。同じ原因が必ず同じ結果を生むわけではなく、異なる原因が似た結果を生むこともあります。したがって、光の量や質がすべてを決定するとは言えません。

このように考えると、やはり機械論や目的論だけでは説明できない「生命の推進力」のようなものがあるとベルクソンは主張します。例えば、イモリの水晶体を削ると別の細胞が代わりを務めます。異なる細胞という原因なのに、同じ「目」という結果を生み出すのです。こうした現象は、機械論や目的論では説明が困難であり、当時の進化論の一つを批判する内容となっています。

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