### 京都会議（COP3）をめぐる反省と思想 ― 日本の環境意識の転換点 1997年

### 京都会議（COP3）をめぐる反省と思想 ― 日本の環境意識の転換点 1997年

1997年12月、京都で開催された「地球温暖化防止京都会議（COP3）」は、温室効果ガス削減に関する初めての国際的な数値目標を定めた歴史的会議であった。議論の末に採択された「京都議定書」は先進国に義務的削減を課し、世界の気候政策に大きな転換点をもたらした。しかし日本国内では、その交渉姿勢や政治的意思決定のあり方が大きな批判を浴びた。特に、政府が経済官僚主導で臨み、政策的・理念的な議論が欠落していた点が問題視された。

当時、NGO関係者からは「日本は数字の駆け引きに振り回され、世界の議論の本流から外れた」との声が相次いだ。数値目標をどう交渉するかに終始し、地球環境保全という根本理念や長期的なビジョンが後景に追いやられたとの批判である。他国が「持続可能な発展」や「世代間倫理」といった普遍的テーマを打ち出す中で、日本は国内産業への影響を最優先に据えたため、国際社会の共感を得られにくかった。

しかし一方で、この会議をきっかけに「環境は経済にとって不可欠な要素である」という認識が国内に浸透した点は重要な成果といえる。従来の日本では環境は経済発展の"制約条件"と見なされがちであったが、COP3を契機に「環境対応が競争力や社会的信頼を左右する」という発想が広がった。ある論者はこれを「日本人にとって良い薬」と表現し、環境思想が政治や経済の中枢に入り込む契機となったと評価している。

このように、京都会議は日本にとって「交渉上の失敗」と「思想的な収穫」という二重の意味を持つ出来事であった。国際交渉力の弱さを露呈した一方で、環境を社会と経済の根幹に位置づける思想的転換を促し、21世紀初頭に向けて日本の環境政策と市民意識を大きく方向づけたのである。