### 環境 スウェーデンにおける環境経営の先進事例 ― ISO14001取得ホテルの挑戦 1997年

### 環境 スウェーデンにおける環境経営の先進事例 ― ISO14001取得ホテルの挑戦 1997年

1990年代後半、世界的に「持続可能な経営」という概念が広がるなか、スウェーデンはその先進事例を提示した国の一つであった。ストックホルム郊外の「ソンガ・セービホテル」は、1997年に世界で初めてISO14001を取得したホテルとして注目を集めた。当時、ISO14001は1996年に制定されたばかりの新しい国際環境マネジメント規格であり、企業や自治体に環境配慮型経営を制度的に組み込む道を開いたものである。ホテル業界での取得は画期的であり、サービス業における環境経営の可能性を示すものだった。

このホテルは赤字経営に苦しんでいたが、経営再建の過程で環境を武器とした戦略を選択した。具体的には、地熱エネルギーを利用した暖房システムや、自然素材を積極的に取り入れた建材の採用により、省エネルギーと環境負荷低減を実現した。また廃棄物削減やリサイクルの徹底、地元産食材の利用などを通じて、環境と地域経済を両立させる仕組みを築いた。これらの取り組みは単なるコスト削減にとどまらず、環境意識の高い顧客を呼び込み、ブランド価値を高める効果をもたらした。

背景として、当時のスウェーデンは「エコ先進国」として国際的な評価を高めており、再生可能エネルギーや廃棄物管理の分野で先駆的な政策を展開していた。1992年のリオ地球サミット以降、北欧諸国では持続可能な発展の理念が社会全体に浸透し、環境対応を経営戦略に組み込むことが競争力の源泉とみなされていた。ソンガ・セービホテルの成功事例は、単なる環境負荷低減ではなく、環境対応が経営改善や市場競争力強化につながることを証明したものである。

この経験は、日本企業にとっても重要な示唆を与えた。当時、日本ではISO14001取得が製造業を中心に進められていたが、サービス業や観光業での応用は限定的であった。スウェーデンのホテル事例は「環境経営は特定産業だけのものではなく、広範な産業で実践可能である」という強いメッセージとなり、以後のグリーン経営やエコツーリズムの発展に影響を与えたといえる。