言葉の迷宮に遊ぶ知性―1960〜1970年代、丸谷才一が示した日本文学の成熟（1960〜1970年代）

言葉の迷宮に遊ぶ知性―1960〜1970年代、丸谷才一が示した日本文学の成熟（1960〜1970年代）

丸谷才一は、戦後日本文学において"知的構築"を重んじた作家であり、言葉そのものの魅力を探求した批評家である。1960年代、文学が政治性から解放され、「どのように語るか」が問われ始めた時代に登場し、その転換を象徴した。代表作『笹まくら』（1968）は古典と現代語の融合によって、言語が現実を超えて意味を生成する過程を描き、日本文学に構造的な深みをもたらした。彼は批評でも『忠臣蔵とは何か』『文学のレッスン』などで、古典を現代的知として再構築し、「文芸的教養」という概念を提示した。論理とユーモアを併せ持つ文体は、感情よりも知性を重視する文学の新しい姿を示している。1970年代にはポストモダン思想の流れの中で再評価され、日本語の多層性と文学の自由を体現する存在となった。