Thursday, October 2, 2025

牛を放牧して雑草を食べさせる農地再生の語り―2004年5月

牛を放牧して雑草を食べさせる農地再生の語り―2004年5月
2004年当時、日本農業は深刻な課題に直面していた。農村の高齢化や担い手不足によって耕作放棄地が急増し、2000年には20万ヘクタールを超える規模に達していたとされる。人の手が入らなくなった農地は雑草に覆われ、景観の荒廃や害虫の発生源となり、地域に重い負担をもたらしていた。そうした時代の中で、牛を放牧して雑草を食べさせるという方法は、単なる思いつきではなく現実的な解決策のひとつとして提示された。

記事は神奈川県や徳島県の事例を取り上げ、牛が1日に50~70キロもの草を食べ、20日もすれば地面が現れるといった具体的な数字を示している。まるで農家同士が「なるほど」と語り合うような会話調で描かれ、放牧の効果を身近に実感させる内容となっていた。人手をかけずに雑草が処理されるだけでなく、牛の排泄物が肥料となり土壌を豊かにするという循環の仕組みも、自然の力を活かす農業の象徴として強調されていた。

また、この発想は2000年代に広まりつつあった循環型社会や環境保全型農業の潮流とも合致していた。化学除草剤に頼らず、牛という生きた「労働力」を活用する考え方は、持続可能性を重視する時代の風を映し出していたといえる。結果として、この「牛による農地再生」の語りは、荒れゆく農村に希望を与える提案であり、地域社会の再生に向けた一つの未来像を提示したのであった。

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