Friday, October 10, 2025

埼玉県小川町と滋賀県愛東町のバイオマス利用 ― 地域循環が芽吹いた初期モデル ― 2004年ごろ

埼玉県小川町と滋賀県愛東町のバイオマス利用 ― 地域循環が芽吹いた初期モデル ― 2004年ごろ

2000年代初頭、日本は「バイオマス・ニッポン総合戦略」(2002年閣議決定)を掲げ、未利用バイオマスを地域で活かす社会をめざしていた。分散型エネルギーや循環型社会の理念が広がる中で、地方自治体が独自に資源循環モデルを試みた。その象徴が滋賀県旧愛東町と埼玉県小川町である。

滋賀県愛東町では1998年から「菜の花エコプロジェクト」が始まり、菜種の栽培、搾油、食用利用、廃食油の回収、石けんやバイオディーゼル燃料(BDF)化までを地域内で完結させる仕組みが作られた。2005年には「あいとうエコプラザ菜の花館」が開設され、油の循環と環境学習の拠点となった。家庭や学校から集めた廃食油をBDFやリサイクル石けんに変え、地場ブランド「菜ばかり」として販売する取り組みは、全国的にも注目された。

一方、埼玉県小川町では、有機農業の実践を背景に、生ごみや紙ごみをメタン発酵で再利用する実証実験が進められた。NPO「小川町風土活用センター」が中心となり、バイオガスによる発電と熱利用を地域内で循環させる仕組みを構築。廃食油の回収や石けん化も進め、環境負荷を抑えながら地域資源を最大限に活かした。

これら二つの事例は、自治体と住民、NPOが連携して資源の循環を作り出した初期の成功例であり、のちの「バイオマスタウン」構想や「地域循環共生圏」の原型となった。地方から始まったこの試みは、再生可能エネルギーと地域経済の共存という日本の環境政策の方向性を早くから示していた。

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