Tuesday, October 14, 2025

アーサー・C・クラークの原稿―冷戦と理性の時代(1960年代)

アーサー・C・クラークの原稿―冷戦と理性の時代(1960年代)

1960年代は、東西冷戦の緊張が極まり、核兵器と宇宙開発が競い合う時代だった。科学は破壊の力であると同時に、人類の希望でもあった。そんな中、日本で展示されたクラークの直筆原稿「人類の進歩と調和」は、科学を倫理と理性の象徴として捉える姿勢を示した重要なメッセージであった。クラークは戦時中にレーダー研究に従事し、科学と軍事の矛盾を知りつつも、技術を人類の協調のために用いるべきだと信じていた。彼が提唱した静止衛星通信の構想は後に現実となり、"科学的理想主義"の象徴とされた。

同時期の日本では、戦後復興の中で宇宙や科学への憧れが若者たちを刺激し、SFが倫理と希望を語る文学として広がった。『2001年宇宙の旅』はその頂点として人類の進化を描き、小松左京や星新一に深い影響を与えた。クラークの理念は、科学を信じることの倫理的意味を問い直し、冷戦の時代に理性と調和を訴える希望の声明であった。

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