Tuesday, December 9, 2025

灯の消えぬ瞬間-過去に縫いとめられた決定論の影(1890年代)ベルクソン「時間と自由」

灯の消えぬ瞬間-過去に縫いとめられた決定論の影(1890年代)ベルクソン「時間と自由」
決定論は人間の行為を因果の鎖で説明しようとする。しかしベルクソンは、この把握方法そのものが行為を過去の静的な結果として固定し、自由の本質を捉えそこねると批判した。決定論が扱う行為は、空間化され、輪郭が与えられ、後から説明可能な形に整えられたものである。だが自由な行為が生まれるのはそのような静的な枠ではなく、意識の持続の内部であり、記憶や感情が重層的に浸透し合いながら生成する連続の厚みの中である。自由な決断とは、この持続がある瞬間に凝縮し、新しい方向を開く創造的飛躍であり、原因と結果に分解できるものではない。後から振り返ると、人はこの飛躍を因果の鎖として再構成してしまうが、それは過去に光を当てたときの影にすぎない。現代の神経科学でも意思決定のプロセスは線
形ではなく、情動や記憶の統合が閾値を超えたときに非線形の跳躍として生じることが示されている。ベルクソンの批判は、決定論が扱う過去の世界と、自由が生まれる現在の生成のあいだに横たわる深い断絶をえぐり出す。

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