技術は編み直されて世界を変える ― 対向衝突思想と環境技術の時代(1990年代-2000年代)
カラサワファインの唐澤代表が語る「世の中の何処にもない技術を開発できる頭や技能があるわけではない」という一言は、一見すると謙遜に聞こえるが、よく読むと二十世紀末以降の技術観の転換を言い当てている。技術は天才発明家が無から創造するものではなく、既に確立した技術をどう集め、どう組み合わせ、どの現場に投じるか。その編集作業こそが価値を生むという静かな宣言になっている。
対向衝突技術は環境分野から生まれたものではない。日本の機械メーカーが開発した湿式微粒化装置アルティマイザーシステムは、超高圧で液体同士を衝突させ、電子材料や顔料、食品、化粧品をナノオーダーまで微粒化する技術として確立していた。不純物の混入が少なく品質が安定するため広く採用されていた。
一方、同時期の中国では都市化と工業化の進展により湖沼の富栄養化が深刻化し、太湖や滇池、巣湖などでアオコの大量発生が続いていた。窒素やリンが流入し続けた結果、夏には広い湖面が緑に染まり水道水が使えなくなる地域もあった。中国政府は導水事業や下水処理場建設など大規模対策を急いだが、広域対策だけでは突発的なアオコ増殖には対応できず、薬剤を使わず即応できる低負荷技術が求められた。
唐澤代表の「ニーズに即した応用アイデアは常に四十パターンある」という言葉は、この状況を背景にしている。対向衝突技術を材料微粒化だけでなくアオコのガス胞破壊という用途へ転地させ、物理プロセスだけで環境負荷を下げるという発想は既存技術の再編によって生まれた価値である。
さらに唐澤氏は「既に確立された技術をそのまま適用するのは容易だが技術の集め方組み合わせ方が独自である」と語る。これは新理論を生み出すよりも既存技術断片を拾い上げ現場課題に合わせて組み替えるというベンチャー的発想であり、環境問題が複雑化する時代にこそ生まれた思想であった。
No comments:
Post a Comment