東京都武蔵野市 家庭から環境政策を動かした廃食用油回収モデルの誕生(1990年代前半)
東京都武蔵野市が家庭の廃食用油回収を始めた一九九一年は自治体の環境政策が分別資源化へ移行しつつも家庭排出物への対応が未成熟だった時期であった。家庭で使い終えた油は下水管の詰まり悪臭川の油膜など都市特有の問題を引き起こし焼却炉の温度管理や耐火材劣化にも影響していたため自治体としては排出抑制と分離回収が重要視されていた。
武蔵野市は市民参加型回収モデルを採用し市出張所四か所コミュニティセンター十か所を拠点に家庭で容器に入れて持参すれば粉石けん二百グラムを配布する仕組みとした。市内循環を意識した小規模な資源循環モデルで環境教育の効果も兼ね備えていた。一九九〇年代前半は生活排水対策が強化され行政と市民が協働して排水負荷を減らす方針が掲げられ武蔵野市の取り組みは中央省庁資料でも先進例として紹介された。
当時の環境運動では市民が直接参加できる行動が重視され廃油を持ち寄る行為は都市環境を自ら整える意識啓発効果が大きかった。のちに全国へ広がるバイオディーゼル燃料事業や廃油石鹸活動もこうした自治体モデルの蓄積が背景にあり武蔵野市の取り組みは九〇年代都市環境政策の中で市民参加型エコモデルとして重要な位置を占めている。
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