Tuesday, August 13, 2024

廃食用油の再資源化と新たな活用法 - 1997年1月15日

### 廃食用油の再資源化

日本では年間約200万トンの食用油が使用されており、そのうち約36万から45万トンが廃食用油として排出されています。廃食用油の約65%は回収・再生されていますが、残りの35%、約13万トンから16万トンが適切に処理されずに廃棄されている現状があります。廃食用油は、ニワトリや豚の飼料添加脂、石鹸、インク、ゴムなど、多様な製品にリサイクル可能です。そのため、廃食用油の回収・再利用を促進することが、環境保全と資源の有効利用にとって重要です。

### 家庭からの廃食用油回収の課題

廃食用油の回収は、主に事業系と家庭系の二つに大別されます。事業系から排出される廃食用油は年間約18万トンに達し、その回収率は90%を超えています。一方、家庭から排出される廃食用油の回収率はわずか5%程度です。家庭での廃食用油の処理は、新聞紙や布に吸わせて可燃ごみとして出す、油凝固剤を使用して捨てる、またはそのまま流すなど、適切な回収が行われていないケースが多いです。特に、油を流してしまうと環境汚染の原因となり、水質汚染や焼却炉の劣化を引き起こします。

### 廃食用油の再資源化と新しい用途

廃食用油の再資源化には、飼料としての利用が最も多く、6~7割を占めます。しかし、安価な輸入バージンナタネ油やバーム油の影響で、再生油の市場は不安定な状況にあります。また、石鹸へのリサイクルも行われていますが、需要が限られており、工場の稼働率は60%程度に留まっています。

そんな中、新たな用途として期待されているのが、植物油を精製して作られるディーゼル燃料「V.D.F.(Vegetable Diesel Fuel)」です。この燃料は、100リットルの廃食用油から約95リットルの燃料を生産でき、二酸化硫黄(SOx)を発生せず、黒煙の排出も従来の軽油の3分の1に抑えられます。また、発熱量や燃費も軽油と同等で、価格もリッター80円と経済的です。この技術は、ディーゼル車の欠点を補う可能性があり、廃食用油の新たな活用法として注目されています。

### 地方自治体と市民団体の取り組み

家庭からの廃食用油回収においては、地方自治体や市民団体の協力が不可欠です。例えば、東京都武蔵野市では、市出張所やコミュニティセンターを回収拠点として設置し、家庭からの廃食用油を定期的に回収しています。回収された油は、飼料や石鹸として再利用されています。また、千葉県の手賀沼流域では、市民団体「せっけんの町共有社の会」が回収活動を行い、回収した油を石鹸にリサイクルしています。このような地域での取り組みが、廃食用油の再資源化を促進し、環境保全に貢献しています。

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