カリスマスカウトの証言―欲望と承認欲求が絡み合う街の力学（1990年代～2000年代）

カリスマスカウトの証言―欲望と承認欲求が絡み合う街の力学（1990年代～2000年代）

歌舞伎町で活躍したカリスマスカウトの証言は、女性を巧みに風俗やホストの世界へ導く心理操作の実態を示すものである。彼らは「君なら成功できる」といった言葉で承認欲求を刺激し、やがて依存関係を築き上げた。これは個人の技術というより、裏社会全体のシステムに組み込まれた仕組みであった。バブル崩壊後の不況期に、短期間で高収入を得たい女性が増えたことも背景にあり、スカウトは社会不安を吸い上げる存在となった。一方でスカウト自身も暴力団や外国人組織の支配下に置かれ、成果を上げなければ切り捨てられる厳しい環境に置かれていた。90年代後半から2000年代初頭には渋谷や池袋でもスカウト抗争が起き、警察による取り締まりが強化されたが、形を変えて今も続いている。SNSやアプリが使われる現代ま
で、その構造は連綿と残っている。カリスマスカウトの証言は、街の欲望の力学を映すと同時に、時代の経済不安や若者文化の歪みを浮かび上がらせるものとなった。