Saturday, August 9, 2025

手賀沼の水質汚染史-1996年から2020年代まで

手賀沼の水質汚染史-1996年から2020年代まで

手賀沼は千葉県柏市、我孫子市、白井市、印西市、鎌ケ谷市にまたがる湖沼で、古くから地域の象徴として親しまれてきました。しかし、戦後の急速な都市化と農業の集約化に伴い、生活排水や農業排水が流入し、深刻な水質汚染が進行しました。

1996年の現状
環境庁の調査では、手賀沼の化学的酸素要求量(COD)は25mg/Lに達し、全国の湖沼で最悪の水質とされました。このCOD値は、印旛沼(21mg/L)や静岡県佐鳴湖(12mg/L)を上回る深刻な数値です。汚染の主な原因は、生活排水に含まれる有機物質や農業排水由来の窒素化合物、リン酸塩であり、これらが富栄養化を引き起こし、アオコの異常発生をもたらしていました。

当時、手賀沼流域の自治体や住民は、下水道の整備や家庭用合併処理浄化槽の普及に取り組みました。さらに、旭化成や日立造船は高度な水質浄化技術を提供し、地域住民と協力して改善策を模索しましたが、抜本的な改善には至りませんでした。

2020年代の現状と課題
2020年代における手賀沼の水質は改善が進み、CODは10mg/Lまで減少しました。しかし、環境基準である5mg/L以下の達成には至っておらず、全国湖沼のワースト4位に位置しています。千葉県の「手賀沼水循環回復行動計画(改定版)」に基づき、以下の取り組みが進められています。

下水道整備と雨水浸透施設: 柏市や我孫子市では、雨水浸透施設を新たに設置し、生活排水の適切な管理を進めています。また、合併処理浄化槽の設置率も年々向上しています。
企業の技術協力: 富士電機や荏原製作所が水質改善技術を提供し、農業排水に含まれる窒素・リンを効率的に除去するシステムが導入されつつあります。
市民の参加: 手賀沼水環境保全協議会は、市民を対象とした清掃活動や環境教育を展開。特に、小学生を対象とした環境学習プログラムが好評を得ています。

具体的な汚染源とその影響
手賀沼の汚染は、柏市や我孫子市の生活排水だけでなく、流域の農業活動による肥料の過剰使用が主因とされています。農業排水に含まれる窒素は、水域内で硝酸態窒素に変化し、藻類の異常繁殖を引き起こします。リン酸塩も同様に藻類の栄養分となり、富栄養化が進行します。

今後の展望
手賀沼の水質改善には、さらなる技術革新と地域全体の連携が必要です。千葉県は、企業や研究機関と連携し、窒素・リンの除去効率を高める装置の普及を図っています。また、自治体は地域住民への環境教育を強化し、家庭からの生活排水の削減に向けた意識改革を進めています。

手賀沼の再生は、地域の経済、観光、環境の持続可能性に大きく寄与する取り組みです。今後も、自治体、企業、市民が一体となり、汚染解消と生態系回復を目指す取り組みが期待されています。

No comments:

Post a Comment