環境 共生の住まいを求めて ― 認定制度創設の歩み 1999年
1990年代後半、日本では住宅分野にも環境配慮の視点が求められるようになり、省エネルギーや高断熱・高気密などの性能改善が重視され始めた。高度経済成長期に大量供給された住宅の老朽化や都市のヒートアイランド現象、大気汚染が顕在化するなかで、建設省系の財団法人は「環境共生住宅認定制度」を創設した。制度は、省エネ性能や耐久性、バリアフリー、立地条件、緑化率を必須要件とし、屋上緑化、雨水利用、自然エネルギー活用など独自の提案型設計も評価対象とする仕組みであった。
関連技術としては、断熱材や複層ガラス、樹脂サッシなどによる熱損失低減、省エネ型給湯器や太陽熱温水器、パッシブデザインの活用などが普及し始めていた。また、屋上緑化や雨水利用システム、中水道設備が都市型環境問題の解決に寄与した。さらに、太陽光発電(PV)の住宅導入が加速し、余剰電力の逆送電制度も議論されるなど、再生可能エネルギー技術の活用が本格化した。
ただし、制度の普及には認定を受けること自体のインセンティブ不足が課題であり、金融優遇策や自治体の助成制度との連動が不可欠とされた。背景には、1997年の京都議定書採択を受けた温暖化対策推進の国際的潮流があり、日本の住宅分野もその影響を強く受けていた。「環境共生住宅認定制度」は、住宅を単なる住空間ではなく、人と環境が共生する場として再定義する象徴的な取り組みであり、循環型社会への転換を支える礎となった。
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