北米西海岸の海洋汚染と漁業衰退―2003年5月

北米西海岸の海洋汚染と漁業衰退―2003年5月

2000年代初頭、北米西海岸では、都市部や農業地帯からの排水、工業廃水などに含まれる化学物質が長期的に海洋に流入し、深刻な環境問題を引き起こしていた。特にPCBや重金属、農薬残留物などは、海水や底質に蓄積し、食物連鎖を通じて魚類や海鳥に悪影響を与えた。漁業資源は年々減少し、漁獲量の低下が漁業従事者の生計を直撃しただけでなく、沿岸地域の経済にも陰を落とした。当時は世界的にも生態系保全の意識が高まりつつあり、国際的な環境条約や規制が議論されていたが、米国西海岸では地域特有の産業構造や排水規制の遅れが課題として残った。また、海鳥の繁殖地が失われ、個体数減少が野生生物保護団体による警鐘を呼び、住民運動や環境NGOによる監視活動が強化された。これらの背景には、戦後の経済成長�
�以降、工業と農業の集約化が進み、排出規制よりも生産性向上が優先されてきた歴史的経緯がある。こうした状況は、漁業衰退と海洋生態系の劣化を同時に進行させ、北米西海岸の環境政策の転換を迫る契機となった。