環境 灼熱の未来図と移住の必然 21世紀初頭
21世紀初頭から中葉にかけて、人類は二つの巨大な潮流に直面している。一つは急増する人口であり、もう一つは加速する地球温暖化である。世界人口は20世紀後半に爆発的に増加し、2000年代初頭にはすでに六十億人を突破している。国連の推計では、2050年には九十億人近くに達するとされ、限られた地球資源の逼迫は誰の目にも明らかになりつつある。同時に、産業革命以来続く化石燃料依存が放出する二酸化炭素は、確実に気温上昇を引き起こしている。2001年のIPCC第三次評価報告書は、21世紀末までに地球の平均気温が一・四度から五・八度上昇すると予測し、未来の人類の生存条件を根底から揺るがすと警告している。
こうした背景のなかで浮かび上がるのが、これまで人類が快適と感じてきた気候条件から数十億人が締め出されるという衝撃的な予測である。人類文明は長きにわたり、平均気温が十三度から二十五度程度の範囲に適応してきた。農業も牧畜も都市の営みも、この環境を基盤に築かれてきた。しかし温暖化の進行と人口増加の圧力が重なれば、この気候の帯は北方へ移動し、既存の広大な居住地は過酷な環境に変わってしまう。研究によれば、十億から三十億もの人々が快適圏から締め出され、もし移住を拒めば世界人口の三分の一が平均気温二十九度以上の苛酷な大地に取り残されるとされる。今日この条件を満たす土地は地球陸地の〇・八パーセントにすぎず、ほとんどがサハラ砂漠に限られている。だが将来はその環境が数十億
人を呑み込むと予想されている。
この予測は単なる学術的警告にとどまらない。バングラデシュでは海面上昇と洪水が国土を脅かし、アフリカのサヘル地帯では干ばつが深刻化している。人口増加の震源地がまさにこれらの地域であるため、環境危機と人口圧力が重なり合い、住めない場所からの大規模移住というシナリオは現実味を帯びている。さらにヨーロッパ諸国では労働移民や難民受け入れをめぐる対立が政治を揺さぶっており、もし数十億人が地球規模で移動を迫られるならという問いは、国際政治と安全保障、さらには経済秩序そのものを揺るがすものと受け止められている。
こうして「数十億人が居住不可能になる可能性」という予測は、人口爆発と温暖化という二つの潮流が交差する時代の危機意識を象徴するものとなっている。人類が移住を拒むならば、三分の一の人々が灼熱の環境に取り残される。その現実味を帯びた未来像は、地球規模での気候変動対策と移民政策の両面を、世界に鋭く突きつけている。
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