Sunday, August 24, 2025

環境 森林から未来を織り成す資本―世界銀行「バイオ炭素基金」構想 2002年

環境 森林から未来を織り成す資本―世界銀行「バイオ炭素基金」構想 2002年

2002年11月、世界銀行は「バイオ炭素基金」を創設し、農業や森林の回復を通じてCO2吸収を図る国際投資を開始しました。これは京都議定書の発効を目前に控え、温室効果ガス削減目標の達成に苦慮する各国にとって新たな解決策となる試みでした。当時、先進国は1990年比で温室効果ガス5%削減を約束していましたが、経済成長とエネルギー依存の狭間で達成は困難視されており、特に森林減少による吸収源喪失が深刻でした。

この基金は、農地や牧草地の再生、荒廃地での植林などを対象とし、投資家はCO2吸収量に応じて排出権を得られる仕組みでした。つまり環境改善が直接的に金融価値と結びつき、環境投資市場の拡大を促しました。設立時点での基金規模は5000万ドル、最終的には1億ドルを計画しており、三井物産や四国電力など日本企業5社も参加を検討しました。資源輸入に依存する日本にとって、森林再生を通じた国際的な排出権確保はエネルギー安全保障とも結びついていました。

当時はまだ「炭素取引市場」が形成途上であり、先進国の中でもEUが先駆けて排出権市場を制度化する過渡期でした。バイオ炭素基金は、炭素固定の新たな価値を提示し、農村開発や森林保全を経済的インセンティブで支える先駆的な試みとされました。この動きはのちにREDD+(森林減少・劣化に由来する排出削減)の仕組みにもつながり、途上国支援と温暖化防止を結ぶ国際的な潮流を生み出したのです。

この基金設立は、環境と経済を一体的に捉える時代の転換点を示し、持続可能な投資の先駆けとして国際社会に深い影響を与えました。

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