Friday, August 15, 2025

舞台芸術と俳優論―昭和後期から現代へ

舞台芸術と俳優論―昭和後期から現代へ

ポール・クローデルの言葉「劇とは何事かが起こる場所である」を起点に、舞台芸術における出来事の必然性と観客の期待が論じられる。当時の日本は高度経済成長を経て文化的多様性が広がり、演劇界にも新しい表現や前衛的試みが芽吹いていた。寺山修司の実験的演出や唐十郎のアングラ演劇が注目され、従来の型にはまらない舞台が次々と登場した。こうした潮流の中で、女優は単に台詞を語る存在ではなく、その佇まい、沈黙、視線の運びまでもが舞台の空気を変える力を持つとされた。特に昭和後期は、映画やテレビの普及と並行して舞台女優の存在感が再評価され、映像では伝わらない「生の気配」が観客を引き寄せた時代である。舞台は生身の俳優が時間と空間を共有し、観客に予測不能な感情の波をもたらす場であり
、その核心は俳優の「存在感」にあった。

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