Thursday, August 21, 2025

### 環境 自然災害の頻発 ― 当時の時代背景を踏まえて

### 環境 自然災害の頻発 ― 当時の時代背景を踏まえて

二一世紀初頭には単独の極端現象ではなく「複合極端」が社会を直撃するという理解が広がっていた。熱波が乾燥と山火事を誘発し、その後の豪雨で焼失地が保水できず洪水と土砂災害が増幅する、といった連鎖だ。都市のヒートアイランドは気温を押し上げ、硬い舗装面が豪雨を吸収できず都市洪水のリスクを高めるため、人口密集地ほど被害が集中しやすいと認識されていた。こうした都市特性は、熱波・大気汚染・異常気象の被災人口を拡大させ、アジアの大都市を中心に脆弱性が高いという指摘につながっている。

その典型がカナダ西部である。二〇二一年前後、ブリティッシュコロンビア州で気温が五〇℃に達し、サハラ砂漠よりも高温となった。そのわずか数か月後には、激しい豪雨が同地域を襲い、洪水と土砂崩れが多発。数千人規模の避難が発生し、道路や物流網の寸断が都市と周辺の生活を直撃した。単一現象ではなく、熱波→乾燥→豪雨→斜面崩壊という多段の災害連鎖が、復旧力を超える速度で進む点が当時の特徴として強調されている。

シベリアではツンドラの大規模火災と永久凍土の後退が同時進行し、地盤沈下やインフラの基礎破壊、氷結期に頼っていたアイスロードの消滅など、生活と産業の前提を揺さぶった。モデル調査では、シベリアの永久凍土の半分以上が今世紀中に消滅しうるとされ、膨大な土壌炭素の放出リスクが指摘される一方、地表の露出は人間活動の拡大を呼び込むという相反する圧力も生んだ。だが後者を期待しても、足元では輸送路や基盤インフラの損壊が先行し、地域社会の維持そのものが難しくなる現実が描かれている。

これらの事例は、避難の長期化や衛生・公衆衛生危機、貧困層ほど移動の自由度が低く都市の脆弱地区に取り残されるという社会問題へつながる。排水や下水が整わぬ避難環境では水系感染症が拡大しやすく、気候災害が単なる自然現象にとどまらず社会的災害へ転化するメカニズムが当時から明瞭に指摘されていた。

要するに、熱波・山火事・豪雨・地盤劣化が重なり合い、広域避難とインフラ崩壊を引き起こす「複合極端」の時代が到来した、という認識が当時の時代背景である。カナダ西部とシベリアの対照的な事例は、その連鎖が高緯度・先進地域でも例外ではないことを示しており、移住計画、耐熱・耐水の都市設計、寒冷地インフラの再設計を同時並行で進める必要性が強調されている。

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