飢えの記憶と落合恵子対話―1970年11月
戦後の食糧難という飢えの原風景が、作家・落合恵子の語りを通して描かれる。幼い頃、配給制度のもとで食べ物に事欠いた日々、焼け跡で拾い集めた芋の皮や、くず米を炊いた記憶が語られる。「空腹」は単なる生理的な苦しみではなく、人と人との関係の中で刻まれる社会的な記憶であり、戦後日本人の心の奥底に横たわる影である、と彼女は語る。
加えて、飢えの記憶は「恥」の感情とも結びついていた。盗み食いを責められた友人の姿、自らが分けてもらったご飯のありがたみ、満腹を知らぬ日々の中で育まれた連帯と葛藤。そのような経験は、落合の作家としての原点であり、弱者への眼差しを育んだ土壌だったという。
この対話は、単なる回想にとどまらず、「飢え」とは何かという根源的な問いを読者に投げかける。経済成長の只中で語られた戦後の貧しさは、豊かさの意味を再考させる契機となる。食べられることが当たり前になった時代に、語り継ぐべき「飢えの記憶」が、ここにある。
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