秋葉原の風に声が混じる日 九七年の実演売り場から(1997年)
一九九七年の秋葉原は家電の街から情報文化へ移り変わる時期にあり駅前には昭和の実演販売文化が残っていた。天然石けんを売る尾之内昭範さんは十四年間その場に立ち続け人々の足を止めてきた。彼は当初環境意識が高かったわけではなく大量消費文化の中で育ち無頓着だったと語る。しかし客からの質問に答えるために調べ続けたことで環境理解が深まった。九〇年代後半は環境問題が一般に浸透し始めた時期で合成洗剤との違いを示す彼の実演は消費者教育の先駆けともいえる役割を果たした。強引な売り方ではなく客が自ら気づく構図をつくり出し都市生活者の知的興味と響き合った。秋葉原の雑踏の中で交わされる小さな対話が環境意識の萌芽となり市場へ浸透していく様子がこの実演販売の魅力と時代性を示している。
No comments:
Post a Comment