Monday, June 30, 2025

闇を越えて運ばれる家電 ―― 使用済み機器と環境の代償(2006年9月)

闇を越えて運ばれる家電 ―― 使用済み機器と環境の代償(2006年9月)

2006年、日本は家電リサイクル法の施行から5年が経ち、循環型社会の実現に向けた取り組みを進めていた。しかしその裏で、制度の隙間を突いて使用済み家電が「中古品」としてアジア諸国に違法輸出されるという現象が広がっていた。こうした家電は、現地で再利用されるどころか、粗雑な方法で解体・焼却され、有害物質が土壌や水、空気を汚染し、生態系に深刻な影響を及ぼしていた。

フィリピン、ベトナム、中国南部では、日本から送られてきたテレビや冷蔵庫が屋外で破壊され、鉛や水銀、カドミウムが垂れ流されていた。冷却装置に含まれるフロンも回収されず、大気中に放出された。これは環境汚染であると同時に、労働者の健康にも悪影響を及ぼしていた。

国内では、こうした輸出を止める制度は未整備で、「廃棄物」か「中古品」かの線引きが曖昧で、税関や環境省の対応も後手に回っていた。港湾ごとに監視体制の濃淡があり、抜け道が数多く存在した。表向きにはリサイクル率が向上しているように見えたが、実際には環境負荷が海外へ転嫁されていたのである。

この問題は、2000年代における日本の環境政策の限界を象徴している。国内のコスト回避の裏に、他国の自然や人間が犠牲となる現実――それは「環境先進国」の名に反する闇の輸出であった。

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