2024年8月18日日曜日

鉱山業リサイクル事業 - 1995年6月

鉱山業のリサイクル事業

概要
鉱山業界では、金属資源の枯渇や廃棄物問題に対応するため、鉱石を採掘して金属を取り出す従来の方法に加え、金属廃棄物から貴金属を回収するリサイクル事業が進められています。この取り組みは、資源の有効利用と環境保全を目的としています。

中外鉱業の取り組み
日本の鉱山業界において、特に注目されるのが中外鉱業のリサイクル事業です。中外鉱業は、1932年(昭和7年)から鉱石の精錬事業を行ってきましたが、1973年のオイルショックを契機に、電子産業から出る不良品を回収し、そこから金を抽出する事業を開始しました。この事業により、鉱石を新たに採掘することなく、既存の廃棄物から金属資源を回収することが可能となりました。

さらに、同社は病院から排出される廃フィルムや写真廃液から銀を回収する技術も開発し、リサイクル事業を拡大しています。1978年には、伊豆大島沖地震で持越鉱山の堆積場が決壊したことを契機に、鉱石の採掘ではなく、貴金属廃棄物のリサイクルに本格的に取り組むようになりました。

精錬工程と廃液処理
中外鉱業の持越鉱山は、現在では精錬工場として機能しており、焼成部門、アルカリ回収部門、酸回収部門などの前処理工程を持っています。精錬工程では、溶練部門と電解部門を経て、99.999%の高純度金や99.99%の電気銀が抽出されます。この工程で発生するアルカリ、酸、シアンなどの廃液は、適切に処理され、無害化されています。また、低品位の貴金属含有物は、別の専門技術を持つ鉱山会社に売却されています。

多目的焼成炉の導入
中外鉱業では、機密文書の焼却などにも対応するため、多目的焼成炉を導入し、廃棄物処理事業の分野を拡大しています。これにより、さまざまな産業廃棄物の処理が可能となり、廃棄物のリサイクル率を高める取り組みが進められています。

鉱山会社のリサイクル事業の意義
日本の鉱業界全体でも、鉱山会社は廃鉱山を総合的なリサイクルセンターに転換する動きが見られます。採掘が終了した鉱山は、鉱害防止のために維持管理が必要ですが、その広大な敷地や選鉱、精錬設備を活用し、廃棄物処理やリサイクル事業を展開することで、鉱山の有効活用と地域の活性化に貢献しています。

通産省も、このような鉱山の特性を活かした「リサイクル・マイン・パーク計画」を策定し、1995年度には約4000万円の予算を投じてモデル事業を推進しています。これは、廃家電製品などをリサイクルするためのインフラを整備し、休廃止鉱山での地域振興にも寄与する取り組みです。

課題と展望
鉱山業のリサイクル事業は、資源の有効活用と環境負荷の低減に貢献しています。



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