ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄の歴史と現状(2020年代)
### 1. 歴史的背景
ロシアでは旧ソ連時代から、北極圏のバレンツ海やカラ海に放射性廃棄物を投棄する慣行が続いていました。1960年代後半から1980年代後半にかけて、約18000個の放射性物質を含む廃棄物がこれらの海域に沈められました。その中には、原子力潜水艦K-27やK-159が含まれています。K-27は1982年に故意に廃棄され、K-159は2003年の曳航作業中に沈没しました。K-27は33メートルの浅い海域、K-159は200メートルの深さに沈んでおり、それぞれが環境に与えるリスクが懸念されています。
当時、これらの廃棄物の海洋投棄は、環境への影響を軽視する「見えないところに置く」という方針で行われました。ロンドン条約が1993年に放射性廃棄物の海洋投棄を禁止しましたが、1994年までにさらに11基の原子炉が海中に捨てられ、一部には使用済み核燃料も含まれていました。
### 2. 2020年代の現状と取り組み
近年、ロシアはこれらの廃棄物の撤去計画を開始しました。ロスアトム(Rosatom)が主導するこの計画では、8年間で6つの主要な廃棄物を撤去する予定です。撤去のためのコストは278百万ユーロ(約45億円)に上り、そのうちK-159の引き揚げには57.5百万ユーロが見積もられています。
これまでにノルウェー政府は1.5億ユーロを拠出し、北極圏の核安全プロジェクトを支援しています。しかし、撤去作業は技術的に複雑であり、放射能漏れのリスクを伴うため、慎重な実施が求められます。K-27は「放射性の時限爆弾」とも言われ、緊急な対策が必要とされています。
### 3. 今後の課題
この問題は、北極圏全体の生態系と漁業資源に長期的な影響を及ぼす可能性があり、国際的な協力が不可欠です。ロシアが率いるこのプロジェクトは、国際社会との協力を通じて、北極圏の環境保護における重要なモデルケースとなることが期待されています。
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