FRP廃船の不法投棄問題の歴史と現状
### 2000年代のFRP廃船問題
FRP(繊維強化プラスチック)製の船体は、耐腐食性と軽量性から日本全国で広く利用されましたが、その処理が難しく課題となっていました。毎年約12000隻の廃船が発生し、そのうち約40%が鹿児島県奄美市や沖縄県石垣島、瀬戸内海沿岸で不法投棄され、景観破壊や漁業への影響が深刻化していました。FRPは焼却時に有毒ガスが発生するため、通常の処理が困難であり、1トンあたりの処理費用は25000円から35000円に達していました。高い処理コストが違法投棄を促進し、漁業者から多くの苦情が寄せられていました。
これを受け、運輸省は2005年までにFRP廃船の70%を再資源化する計画を推進。三菱重工業は、劣化部分の交換が可能なモジュール化設計を採用し、再利用効率を向上させました。また、FRP船を粉砕し、建材や道路舗装材の原料として再利用するプロジェクトも展開されました。さらに、造船メーカーは不要になった船を回収・再整備し、年間3000隻を再販売する仕組みを整えました。これにより、処理コストは約15%削減されました。地方自治体や漁協も協力し、処理施設を整備することで不法投棄の抑止に取り組みました。
### 2020年代の現状と取り組み
2020年代に入っても、FRP廃船の処理は依然として重要な課題です。年間約25000隻以上のFRP船が廃船となり、特に小型漁船やプレジャーボートの適正処理が課題となっています。国と地方自治体は協力してリサイクルシステムを整備し、2022年には全国で314.2トンの廃船が処理され、そのうち約68.8%がリサイクルされました。
FRP船のリサイクル費用は、全長6.5メートルの漁船の場合、リサイクル料金が65000円、運搬費が27000円、清掃費が22300円かかることが報告されています。このような高コストが依然として不法投棄を助長する要因となっています。海上保安庁は、全国規模の不法投棄防止キャンペーンを展開するほか、各地にリサイクルセンターを設置し、処理体制を強化しています。
リサイクルの過程では、船体の素材を分別し、ガラス繊維やポリエステル樹脂を高燃焼燃料やセメント製造の原料として再利用しています。また、地方自治体は地域廃船処理協議会を設立し、各地域での円滑な処理を目指しています。こうした取り組みが進むことで、廃船の適正処理が促進され、循環型社会の実現が期待されています。
今後も、国、地方自治体、企業が連携し、FRP廃船問題の解決と海洋環境の保全に向けたさらなる努力が求められています。
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