フィリピン・スービック湾における廃棄物不法輸出事件と日本の現状 - 2020年1月
2020年、日本からフィリピンのスービック湾へ約5000トンのプラスチック廃棄物が不法に輸出された事件が発覚しました。この廃棄物輸出に関与したのは「東亜環境株式会社」で、同社はリサイクル基準を満たしていない混合プラスチック廃棄物をフィリピンへ不正に送り出していました。これらの廃棄物は、現地で適切に処理されず、環境汚染を引き起こしました。フィリピン政府はこの不法輸出を厳しく非難し、廃棄物の積み戻しを要求。日本は再び廃棄物を返送することとなりました。
スービック湾に到着した廃棄物のうち、約3500トンが野積みされ、1200人の住民に健康被害が報告されています。有害物質ダイオキシンが発生し、大気汚染が深刻化。さらに、地下水の鉛やカドミウム濃度が基準値を超え、周辺住民に呼吸器系疾患や健康被害が広がりました。
日本国内では、環境省が「東亜環境株式会社」に約5億円の罰金を課し、関与した従業員を刑事告発。同社は虚偽の輸出申請を行い、フィリピンの規制を無視していました。この事件は廃棄物輸出管理の不備を示し、日本国内で批判が高まりました。
この事件を受け、日本の廃棄物輸出に対する監視が強化され、混合プラスチック廃棄物の輸出には厳格な分別と第三者検査が義務付けられました。さらに、2021年にはバーゼル条約が改正され、プラスチック廃棄物の輸出規制が強化。フィリピンやマレーシアは輸入制限を設け、日本からの廃棄物輸入を厳しく制限しています。
2020年の調査によると、日本から輸出された廃棄物の約30%が追跡不可能となっており、廃棄物取引の管理不足が依然として課題。今後、国内のリサイクル処理能力を増強し、企業の不法輸出を防ぐための監視体制強化が求められています。
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