奄美大島のゴルフ場開発問題 - 1996年10月
奄美大島北部の住用村で、約130ヘクタールの土地に36ホール規模のリゾートゴルフ場開発が計画されました。しかし、この開発地は特別天然記念物であるアマミノクロウサギ(推定個体数:500~1000匹)の主要な生息域と重なり、強い反発を招きました。ゴルフ場の整備に伴う森林伐採や土砂流出が懸念され、環境保護団体と住民が開発中止を求める仮処分を鹿児島地方裁判所に申請しました。
計画では、全体予算として約50億円が見込まれ、年間約12万人の観光客誘致を目指していました。開発企業は地域経済の活性化を理由に、150人以上の雇用創出を約束していましたが、伐採される森林は50ヘクタール以上に及ぶため、生態系への影響が問題視されました。特に、森林の喪失が降雨時の土壌流出を引き起こし、下流域の農業用水が汚染されるリスクが指摘されました。
開発反対派は、観光収益よりも自然環境の保護が優先されるべきだと主張しました。一方で、住用村の一部住民からは、観光施設の整備による経済発展への期待もあり、地域内で意見が分かれる事態となりました。
最終的に、開発企業は規模を縮小し、18ホールに変更する案を提示しました。さらに、年間約1000万円を地域の環境保護活動に充てる基金の設立も提案されました。県の環境保護条例に基づく調整の結果、事業は一時停止となり、再評価に基づく環境アセスメントの見直しが進められています。この問題は、日本国内における観光開発と自然保護のバランスに対する重要な課題を浮き彫りにしました。
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