Monday, April 7, 2025

小室等、都市に歌を — 1978年「東京旅行」回想

小室等、都市に歌を — 1978年「東京旅行」回想

1978年小室等は「東京旅行」と題したコンサートツアーを東京23区で展開した。この旅は単なる音楽公演ではなく、フォークの精神を都市に響かせる詩的行脚であった。60年代後半「六文銭」リーダーとして頭角を現した彼は、社会問題に鋭く切り込む音楽で日本のフォーク界を牽引してきた。

当時日本は高度経済成長の終焉と安定成長期への移行期にあり、インフレや政治の変動、新しい音楽潮流の台頭など不安と変化に揺れていた。小室はそうした時代の波に抗いながら、自身の信念を曲げることなく歌を届け続けた。江東区東隣区民館や練馬富士見高校講堂などで行われた本ツアーは、東京労音の支援のもと、労働者や市民に音楽を通じた文化の場を提供した。

フォークからニューミュージックへの移行が進むなかでも、小室等は時代と真正面から向き合い、音楽によって社会に語りかけた。「東京旅行」は、都市と人間、そして記憶を繋ぐ小室の確かな足跡であり、1978年の東京に深く刻まれた声だった。

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