不買から「買う運動」への転換 ― 環境意識が市場を変えた 1999年
1990年代後半、日本の消費者運動は大きな転換点を迎えた。1970年代から80年代にかけては、環境破壊や企業の不祥事に対する「不買運動」が強力な武器として機能していた。例えば公害企業の商品を買わない、環境負荷の大きな製品を拒否するといった姿勢が市民運動の主軸だった。しかしバブル経済崩壊後の停滞期に入り、単なる「拒否」では限界が見え始める。環境問題は日常生活の中でより具体的に意識されるようになり、消費者自身が積極的に「どう選ぶか」に焦点を移していった。
このころ、消費者団体の間で「環境商品を選んで買う」という新しい基準づくりが始まる。リサイクル可能性、環境負荷の低さ、安全性、耐久性といった項目が購入判断の柱とされ、グリーンコンシューマー(緑の消費者)の概念が浸透していった。背景には、京都議定書(1997年採択)をめぐる温暖化対策の議論が国際的に広がり、国内でも「環境保全は告発よりも提案へ」という流れが強まったことがある。つまり、社会全体が「どう行動するか」に転じ始めた時期だった。
この動きは当然、企業側にも波及する。中小企業を中心に、環境を経営理念に据える動きが芽生えた。だが現場の経営者からは「かつては市場ニーズを顧みず、独りよがりの商品開発をしてしまった」といった反省の声もあがった。環境に良いことをすれば売れると考えがちだったが、必ずしも市場がついてこない現実に直面したのである。やがて、買う側の基準と売る側の工夫が重なり合う中で、環境効率の高い製品やリサイクル素材を用いた商品が次々に登場するようになった。
この「不買から買うへ」の流れは、環境ビジネス市場を大きく成長させる契機となった。1999年当時、東京で開かれた環境ビジネスフェアには75社以上の中小企業が参加し、消費者の期待を受けた多様な環境商品が並んだ。売り手と買い手の意識がようやくかみ合い、市場は「揺籃期」を脱して「成長期」へと入っていった。
このように、90年代末は「拒否する消費」から「選んで支える消費」への過渡期であり、グリーン購入運動の始動点だったといえる。当時の時代背景――経済の停滞、地球環境問題への国際的な注目、消費者意識の高まり――が複合的に絡み合い、環境商品が市場の主役へと押し上げられていったのである。
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