銭と雲のあわいに生きる筆 ジョージ秋山――昭和46年
ジョージ秋山は、人間の欲望や偽善、弱さを直視し続けた漫画家である。代表作『銭ゲバ』は、高度経済成長末期の日本を舞台に、金が人間関係や幸福を支配する現実を冷ややかに描いた。貧困に追い詰められた主人公が、手段を選ばず頂点を目指す姿は、成長の影で歪んだ社会の本質をあぶり出し、読者に不快感と共感を同時に呼び起こした。
『浮浪雲』は江戸の宿場町を舞台に、のらりくらりと世を渡る主人公・雲を中心に描かれる人情譚である。時代劇の装いを借りながら、現代の競争社会や規範意識への皮肉を織り込み、日常を受け流す生き方の妙味を提示した。
昭和46年前後の日本は、学生運動の終息、公害や過労死の顕在化、テレビ商業主義の拡大が同時進行していた。漫画界では劇画や青年誌が台頭し、リアルな社会描写を求める声が高まった。秋山は、過激な暴力表現と緻密な心理描写を融合させ、単純な善悪論を排する作風を築き上げた。
同世代の永井豪が性と暴力を誇張し、さいとう・たかをが社会構造と職業人をリアルに描き、石森章太郎が寓話性豊かなSFを展開する中で、秋山は金と人間の業を主題に据え、笑いと悲しみを同じ紙面に共存させた。その筆致は、時代の矛盾を生々しく刻みつける「人間喜劇」の域に達していた。
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