Friday, August 1, 2025

"バイオマスエネルギーの特徴"

"バイオマスエネルギーの特徴"

"枯渇性が高く海外調達に頼る地下資源から再生可能かつ国内調達可能な新エネルギーヘのシフトの中で、バイオマスエネルギーが注目されている。ここでは、これまでの経過を振り返り、今後の動向を整理する。"

"バイオマスエネルギーの特徴"

"バイオマスエネルギーの特徴"

バイオマスとは、エネルギーや原料に利用できる動植物資源及びそれらを起源とする廃棄物の総称である。具体的には、森林、穀物、草木、畜産ふん尿、海洋植物などの農林・畜産・水産資源の他、産業、都市、汚泥などの廃棄物がある。ちなみに、地球上でのバイオ資源総量は乾燥重量で1兆80億トン(総生産量で27兆8000億トン)である。これらはマテリアルとして利用されるほか、燃焼や発酵などの手段によりエネルギー源としても利用されている。

国内で生成されるバイオマス資源は年間3億5000万トン(乾燥重量)。化石燃料の乏しい日本においてはエネルギーセキュリティの観点から貴重な資源である。また、バイオマスに含まれる炭素は、化石燃料と比べると最近に大気中のCO2から取り込んだものであり、地球上で比較的短期間で循環していると見なされる。このため、事実上、大気中のCO2の総量は増やさないとされる(カーボンニュートラル)。さらに、従来は廃棄されていたバイオマスを資源として利用することで、廃棄物減量と農林水産業・食品加工業・廃棄物処理業などの活性化につながり、地域振興に寄与する。そのほか、森林資源の有効利用により山林の保全が進めば、防災や水源保全、レクリエーションへの活用など、多角的な効果が期待できる。

"欧州におけるバイオマスエネルギーの展開"

"欧州におけるバイオマスエネルギーの展開"

以前より、フランスや北欧では木質バイオマスの利用が、イギリスやドイツではメタン発酵が盛んに行われており、近年の環境意識の高まりを受け、1997年にEU委員会より発表された再生エネルギー白書で、バイオマスエネルギー活用の促進が提唱された。この方針のもと、2001年には再生可能エネルギーに関するEU指令が発令され、ドイツではバイオマス政令で8.5~10円/KWh程度の売電価格が実現している。また、北欧では地域熱供給インフラが整備されているため、バイオマス事業がエネルギー産業として確立している。フィンランドでは木質系エネルギー産業が25億ユーロ(00年)となっており、雇用は26,000人に及んでいる。既に、フィンランドではバイオマスエネルギーが全エネルギー需要の25%を賄っている。欧州の特徴として、バ�
�オマス資源利用の92%は熱利用が主体となっている。

"米国におけるバイオマスエネルギーの展開"

"米国におけるバイオマスエネルギーの展開"

米国は広大な国土に大規模なバイオマス産業が集積しているため、日本と比べると低コストでバイオマスを利用できる環境にある。このうち、以前から盛んな木質系バイオマスによる発電は660万KWと全バイオマス発電の約6割を占め、原木育成からエネルギー供給、木製品販売まで一連の事業を手がける大規模林業メーカーがカスケード利用を行っている。米国は、1978年には既に公益事業規制法で再生可能エネルギーの開発及び促進を目指し、これを受けて熱価格の優遇やバイオマスガス、液体燃料を対象とした生物質エネルギー利用が促進されている。しかし、火力発電に比べて熱利用率が低いため、今後は多様なバイオマスエネルギーの利用が期待される。

"中国におけるバイオマスエネルギーの展開"

"中国におけるバイオマスエネルギーの展開"

中国では、既に農村地域ではバイオマスエネルギーが日常的に利用されている。その一方で、都市部ではエネルギー需要の増大に伴い、環境問題も深刻化している。このため、中国政府はバイオマスエネルギーの利用促進を目指し、政策面での支援を強化している。2016年には、新エネルギー政策においてバイオマスエネルギーの開発を重点的に取り上げ、2030年までにその利用量を大幅に増加させる計画を示した。具体的には、バイオマス発電の設備拡充やバイオマス燃料の普及促進などが進められている。また、中国のバイオマス資源量は非常に豊富であり、農業残渣や林業副産物などの利用が期待される。今後は、中国のバイオマスエネルギー市場の更なる成長が期待される。

"日本での導入経緯と特徴"

"日本での導入経緯と特徴"

日本でも、以前より製材所排出材(端材やおが屑など)の燃焼利用や畜ふんのメタン発酵などが行なわれてきた。石油危機を契機に、一時は代替エネルギーとしての利用が盛んになったが、その後、石油冊給の安定化に伴い、下火となった経緯がある。

日本においては、02年6月のエネルギー政策基本法で環境適合性とエネルギーセキュリティの観点から新エネルギーの導入が定められ、02年12月のバイオマス・ニッポン総合戦略によってバイオマスエネルギー推進が明確化された。加えて、04年11月から完全施行となる家畜排せつ物法や01年施行の食品リサイクル法により、廃棄物管理の適正化や有効利用が求められており、その方策としてバイオマスのエネルギー利用が注目されている。

"日本におけるバイオマスエネルギーの発展段階"

"日本におけるバイオマスエネルギーの発展段階"

日本におけるバイオマスエネルギーの発展段階は、バイオマス・ニッポン総合戦略で、フェーズ1~フェーズ3の3段階が規定されている。フェーズI (~2005)は廃棄物系資振を中心とした確立された転換技術による導入フェーズ(注:転換とはバイオマス資源をエネルギーとして利用可能な形にすること)、フェーズ2 (~2010)は林地残材や農作物非食用部などの未利用資源活用フェーズ、フェーズ3 (~2020)は資源作物の栽培による戦略的・積極的利用フェーズである。なお、各フェーズにおける資源の詳細は専門書を参照されたい。

"バイオマスエネルギーのプレーヤー"

"バイオマスエネルギーのプレーヤー"

バイオマスエネルギーの関係者は、事業主体となる民間事業者や地方公共団体、研究や普及を行なう公的機関・公益法げられる。民間事業者には、バイオマスの排出事業者や収集・運搬業者、転換事業者、生成物受入業者及び装置業者がある。バイオマス排出業者は畜産農家・耕種農家や林業・製材業、建設・解体業、剪定枝を排出する造園・清掃業等があり、収集・運搬業者は運送業者や廃棄物処理業者である。中核となる転換事業者は、各種組合等の形態で組織される場合も多い。

"5. バイオマスエネルギーの課題と今後の動向"

「前述のように、バイオマスエネルギーはコストの面で事業の自立性が難しい場合が多いのが現状である。その主な原因として、以下の点が挙げられる。
・エネルギーの分布密度が低く、収集コストが高い。
・プラントの価格が高い。
・転換効率が低く、生成エネルギーが小さい。
・生成物(電力、熱、堆肥等)の単価が低いうえに電力以外は需要が小さい。
・湿式メタン発酵で消化液の液肥利用が困難な場合の水処理のように、生成する廃棄物の処理コストが高い。
以上のような原因によるコスト高が普及の最大の阻害要因になっているが、コスト以外にも、次のような課題が存在する。」

「・バイオマス利用に関する情報が十分でなく、技術や制度、法規等に関して情報を収集し適切な計画を作成するまでに、時間を要する。
・廃棄物処理業としての登録や焼却炉として規制を受ける場合があり、事業スキームの幅が狭められる場合がある。
以上の課題に対して、以下のような方策が考えられる。」

「・収集コストの低減
技術開発(林業機械の高度化・低価格化など)や収集システムの合理化によりコストを低減する。
・発電プラント価格の低減
荏原製作所ではユニット化・規格化により1,000万円/日処理t(償虚計人)の廉価プラントを発売した。また、コーンズ・エージーでは20tコンテナ2本に収容した、1,000万円/日処理tを切る血済み輝プラントを発売している。このように、需要拡大を勘案してユニット化・規格化と大規模生産による装置単価・設置工事費の低価格化が進行するものと考えられる。」

「・公的助成措置の活用
農林水産省及び林野庁、経済産業省や資源エネルギー庁及びNEDO、環境省、文部科学省、厚生労働省などが、バイオマス利用あるいは廃棄物処理関係の補助金を設けている。04年11月の家畜排せつ物法完全施行を控えて助成を強化している制度もある(04年度は03年度の1.5倍予定)。なお、助成対象事業は、①地方公共団体の事業、②第三セクターやPFI方式の事業、③共同組合等による事業、④民間企業の順に多いため、事業スキームの検討においては、補助金利用も念頭において事業体を構築することが望ましい。」

「・技術革新による高効率化と低コスト化
技術革新によりエネルギー収支を改善すると共に、処理コストが下げ排水等の副生成物削減を図る。研究開発への公的支援の拡大も必要である。
・生成物の売買単価や流通量の拡大
売電に関してはRPS法の精神に則り、EU並みに10円/KWh程度(日本の現況は4円/KWh強が多い)の売電単価が広まることが望まれる。このためには、電力会社の努力だけでなく、バイオマス事業者側にも系統連係での供給安定性向上に向けた努力が必要である。また、現状では利用が十分でない熱の利用拡大が必要である。北欧のような熱エネルギーの供給インフラの整備が寒冷地を中心に望まれる。その他、生成する堆肥・液肥や炭化物の需要喚起が重要である。堆肥・液肥の需要拡大につなげるためには、有機・減農薬農法における除草作業の労力軽減や病気に強い品種づくり、窒素過剰問題への対処等、農業分野の研究開発が重要な鍵を握っている。」

「・情報ネットワークの拡充
バイオマス情報ヘッドクォーターが東大総研て:03年11月に立ち上がった。まだ整備途上であるが、今後も全国的な実務情報交換ネットワークが発展することが期待される。
・規制緩和
廃の取扱い等の規制について、再生利用認定制度・指定制度の利用や構造改革特別区域の認定などにより、事業環境の整備を図ることを検討する。また、現在は表面化していないが、将来生じるであろう問題として、資源配分の最適化がある。バイオマスはエネルギー密度が低く、広く分布するため、利用できる資源を適切に配分することが必要である。欧州では、既に '早い者勝ち'といった現象も見られている。資源の種類、性状あるいは分布状況により適合する利用方法は異なるので、変換効率や環境負荷を総合的に考慮しつつ、地域全体での資源配分の最適化を図る必要がある。これには、何らかの政策誘導が必要になるものと考えられる。

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