Thursday, August 28, 2025

北を夢見る世紀の設計図 ― 気候変動と人類移住構想(二一世紀初頭)

北を夢見る世紀の設計図 ― 気候変動と人類移住構想(二一世紀初頭)

二一世紀初頭、気候変動が地球規模で現実の脅威となり、平均気温が三度から四度上昇する未来が具体的に想定されるようになっている。氷床の後退、海面上昇、干ばつや洪水など異常気象が頻発し、人類は生存のために大規模な移住を計画的に進めざるを得ないという議論が強まる。構想は、カナダやシベリアといった極北の地に新しい都市を築き、熱帯地域を放棄するというものである。政治的な国境を越え、地質や生態系、水資源といった自然の条件を基盤にした人口配置を考え直すことが求められる。

当時の背景には、冷戦後のグローバル化と並行して移民や難民の問題が深刻化していた現実がある。ヨーロッパでは中東やアフリカからの難民流入が政治を揺さぶり、アメリカでも移民をめぐる社会的分断が顕著だった。そこに気候変動が重なり、「気候難民」という新たな存在が現実味を帯び、数億人規模の人口移動が予測されている。また、二〇〇七年には史上初めて都市人口が農村人口を上回り、都市化が加速していた。この大都市化の潮流と「住める場所の北上」が重なることで、北方への都市建設は不可避との認識が広がっている。

この発想は単なる科学的警告ではなく、政治的・倫理的課題をも伴う生存戦略である。世界を新たな視点から眺め、国家の枠を超えた環境条件に基づく再配置を検討することは、人類の未来を左右する選択となっている。

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