環境 ハイフォン市が挑む持続可能な開発の対話
現在、ベトナム北部の港湾都市ハイフォン市では、経済発展と環境保護をめぐる緊張感ある議論が続いている。市は「経済成長のために環境を犠牲にしない」と明言し、工業団地の開発を進めるにあたって、従来型の大量生産・大量消費モデルからの転換を模索している。市のリーダーは、経済の加速と環境の持続性は対立概念ではなく、むしろ相互補完できると強調し、再生可能エネルギーの導入を産業基盤の必須条件に位置付ける。
この場に集まるのは行政官、企業経営者、国際的な専門家である。行政側は、外国資本の受け入れに際し、単なる雇用創出ではなく、技術移転やグリーン技術の導入を条件とする姿勢を示す。一方で地元企業は、コスト増加への懸念を率直に表明するが、その背後には「国際競争力を維持するためには環境基準を満たさざるを得ない」という認識が共有されている。
議論の中心には再生可能エネルギーの比率拡大がある。太陽光発電や風力発電に加え、廃棄物発電やバイオマス利用も検討されており、工業団地自体を「エコ・インダストリアルパーク」として設計する構想が語られる。これに対して国際的な専門家は、先行事例としてドイツや北欧の循環型産業モデルを提示し、長期的な投資回収の可能性を強調する。
この対話は単なるスローガンでは終わらない。参加者は「環境コストを外部化して発展する時代は終わった」と認め、むしろ環境配慮を競争力に転換する方法を探ろうとしている。ハイフォン市の議論は、開発途上国に共通する課題を映し出しつつ、「持続可能な開発は現実的に実現できるか」という問いを投げかけているのである。
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