生の躍動と創造性―1900-2025
ベルクソンの哲学において、「生(エラン・ヴィタール)」は単なる生命現象ではなく、予測不可能で創造的な時間の流れそのものと結びついている。彼にとって、生はあらかじめ決められた設計図に従って機械的に進むものではない。むしろ、それは絶えず新しさを創り出し、自らの未来を切り拓いていく運動である。
この「創造的進化」という考え方は、自然界における多様な生命の姿を説明するうえで重要だ。ベルクソンは、すべての生命がただ効率的に適応するだけでなく、新しい形式を試み、そこに美や驚きを生み出していく点に注目する。たとえば動物の行動、植物の成長、人間の芸術や道徳すらも、この創造的エネルギーの現れと見る。
また、この創造性は偶然の積み重ねではなく、「持続」と呼ばれる内的な時間の中で展開される。持続とは、過去と現在が溶け合い、質的に変化しながら未来へと続く時間のあり方であり、生はこの持続の中で、ただ生き延びるだけでなく、新しい形態を絶えず生み出す。
このように、ベルクソンにとって生命とは、「目的に向かう進化」ではなく、「目的を自ら創り出す進化」なのである。彼の思想は、進化論や生物学を越えて、人間の創造性や歴史の可能性にまで深く関わってくる。私たちの思考や社会もまた、生と同じように、予測不能な創造の流れの中にあるのだ。
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