蛇口までの約束 日本の水道と規制強化 1993-1995
1990年代前半、日本の水は「源流から蛇口まで」を一気通貫で管理する段階へ踏み出した。出発点は1993年の水道水質基準の全面見直し。厚生省は基準そのものを大きく改定し、補完的な監視項目の枠組みも整備して、1993年12月に施行した。これは、浄水処理だけでなく水源側の管理を含めた実務の再編を促す合図だった。
その流れを加速させたのが1994年のいわゆる水道水源二法である。厚生省の「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」と、環境庁の「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法」が相次いで公布され、自治体や事業者に対する水源保全と監視の権限と手続きを制度化した。以後、水源域での汚濁要因の抑制と、浄水側の高度処理導入が同時並行で動き出す。
規制強化の核にあったのはトリハロメタン対策である。塩素消毒と水中の有機物が反応して生じるこの副生成物は、総トリハロメタンで0.1mgL以下という基準が明確に示され、管理の柱となった。基準値は当時の審議会答申に基づくもので、その後の見直しでも基本線は維持されている。
技術の現場では、オゾン酸化と生物活性炭の組み合わせによる高度浄水処理が各地で本格化した。オゾンで臭気物質や前駆物質を酸化し、生物活性炭で吸着と生分解を図る二段構えは、トリハロメタンの抑制と飲み口の改善を両立させる切り札として定着していく。東京都水道局は高度浄水の意義と効果を公式に説明し、都市圏の標準技術へと押し上げた。
こうして1993から1995へ、水質基準の刷新と水源二法の施行、そして高度処理の普及が一本の線でつながった。制度は責任の所在と守るべき数値を示し、技術はそれに応える形で現場に降りていく。上流で汚さず、下流で確実に除き、最後は蛇口の一滴に信頼を宿す。その時代の約束は、今も日本の水を支える土台になっている。
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