Wednesday, October 1, 2025

ゴルフ場を舞台にした太陽光発電の「もしも」対話―2004年5月

ゴルフ場を舞台にした太陽光発電の「もしも」対話―2004年5月
私はあの時、荒れ果てたゴルフ場を歩きながら考えていた。バブルの頃は接待客でにぎわっていたはずのフェアウェイが、今では静まり返り、草だけが生い茂っている。会員権バブルの崩壊で誰も来なくなり、広大な土地がただ眠っている。その景色を前にして、ふと「ここに太陽光パネルを並べたらどうだろう」と思ったのだ。

京都議定書が採択され、日本も温室効果ガス削減の責任を負うようになった時期だった。エネルギーのあり方が問われ、再生可能エネルギーが少しずつ注目を集め始めていた。私は足元の広さを確かめながら、1ホール14000平方メートルに10kWのシステムを置いたら、どれほど電気を生むのか試算をした。年間100万kWh、金額にすれば2400万円分。計算した瞬間、フェアウェイが「エネルギー畑」として蘇る姿が頭に浮かんだ。

もちろん夢物語では済まされなかった。初期投資は巨額だし、売電契約や制度の壁も高い。現実の厳しさを思い知らされながらも、それでも「やれるのではないか」という思いは強まった。遊休資産を無駄にせず、未来の電力を生み出す仕組みは、社会が必ず必要とするはずだと信じていた。

振り返ってみれば、あのとき描いた「もしも」は決して空想ではなかった。その後、全国で閉鎖されたゴルフ場がメガソーラーに姿を変えていったのだから。私が歩いたフェアウェイのイメージは、ほんの数年後に現実となり、日本の再生可能エネルギー導入の象徴のひとつになった。あの瞬間の「もしも」は、未来を覗き込む確かな手応えだったのだ。

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