モロッコ沖 大西洋の風が運んだ環境格差の影(1970年代〜1990年代)
モロッコ沖は大西洋航路の要衝で、多くのタンカーが行き交う地域であったが、二十世紀後半には老朽化した便宜置籍船(FOC)が多数通航し、船齢や管理体制の甘さから事故が頻発した。カナリア海流は油膜を広域に運び、ひとたび流出が起きると海岸線の広い範囲が影響を受けた。しかし当時のモロッコ沿岸では油回収装置や専門船が不足し、インフラ整備も遅れていたため初期対応が遅れ、海藻、魚類、海鳥、貝類などの生態系に深い傷を残した。観光や漁業への被害も甚大で、地域住民が素手で油塊を拾い続ける光景は国際社会に衝撃を与えた。
この海域での事故が注目された背景には、発展途上国が先進国の産業活動の負の受け皿になっていたという環境格差の構造があった。先進国が建造した船舶が規制の緩い国籍を付与され、環境対応力の弱い国の沿岸に最も重い負担を残す状況は、九〇年代の環境政策議論で大きな問題となった。欧州連合(EU)は港湾国検査(PSC)制度を強化し、老朽タンカー排除を進めたが、完全な改善には至らず事故は断続的に続いた。
モロッコ沖の事故群は、単なる油流出ではなく、国際経済の不均衡と環境被害が結びつく象徴的事例と位置づけられ、記事中で世界規模の環境格差を示す代表例として扱われている。
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