都市の暗がりに沈む揺らぎ 2011年前後
震度5強に揺れた東京は建物の倒壊こそ大きくなかったものの都市生活を支える細い糸が静かに断たれていく見えない被災が連鎖した。エレベーターの停止は高齢者や高層住宅の住民の移動手段を奪いガスの供給停止は家庭の食生活を不自由にし銭湯の煙突破損は多くの店を廃業に追い込んだ。人々が心身を回復する場が失われたことで都市の生活は目に見えない形で摩耗していった。
計画停電により街の灯りが部分的に消え都市の夜景が暗くなると日常が揺らいでいく不安が広がった。物流も滞りスーパーの棚が空になるという極めて象徴的な場面は都市が抱える脆さを明らかにした。表向きには東京は無事と言われがちだったが実際には人々の生活の基盤が少しずつ削られるような静かな被災が広がっていたのである。
さらに東北の津波や原発事故の映像が連日報じられ続け東京の人々は自分が被災者なのか支援者なのかという立場の曖昧さに揺れた。東北に比べれば被害が小さいという後ろめたさと自分の生活も崩れていく現実が重なり言葉にしづらい不安が社会全体に漂っていた。買い占め交通の混乱外出困難になった高齢者など当時の記録にはこうした不可視の被災が数多く残されている。
震度5強の東京が示したのは災害の大きさではなく都市という存在が持つ静かな破綻の怖さであった。
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