Monday, June 2, 2025

有害物質の違法輸出問題-1999年9月から2020年代まで

有害物質の違法輸出問題-1999年9月から2020年代まで

1999年、日本から主に東南アジア諸国に輸出された産業廃棄物が適切に処理されず、現地で深刻な環境破壊を引き起こしました。フィリピンでは輸入廃棄物の約30%が有害物質を含み、不法埋立による水質汚染が発生。鉛やカドミウムが地下水を汚染し、住民への健康被害が報告されました。タイでは適切な設備のない施設で焼却され、大気中のダイオキシン濃度が基準値を超過するなど、長期的なリスクが懸念されました。

背景には国内処理コスト削減のための違法輸出があり、虚偽の処理証明書が使用される事例も確認されました。環境省はバーゼル条約に基づく規制強化を実施し、川崎重工業や荏原製作所などが国内処理技術を高度化。荏原製作所の高温焼却技術はPCB無害化で高評価を受け、横浜港や神戸港などでは輸出貨物検査が強化されました。

2010年代の動向
2010年代には、バーゼル条約に基づく規制がさらに強化され、国内での廃棄物処理能力が向上しました。日本から輸出される有害廃棄物量は減少傾向にありましたが、一部では不法輸出が依然として問題化していました。特に廃プラスチックや電子廃棄物の輸出が続き、受け入れ国での適切な処理が課題となりました。

また、川崎重工業や荏原製作所が高度なリサイクル技術や焼却技術を提供し、国内処理の効率化が進展。地方自治体間の連携が強化され、廃棄物処理ネットワークが構築されました。一方、処理コスト削減の観点から、国内でのリサイクル促進や発生抑制の取り組みが進められました。

2020年代の現状
2020年代には、バーゼル条約に基づく「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)の施行により、輸出入の適正化が大きく進展しました。2021年には、日本から輸出された特定有害廃棄物の総量は95386トンに減少し、輸入量は1776トンに微増しています。主な輸出先はマレーシアやタイで、廃プラスチックや電子廃棄物が中心となっています。

国内では、荏原製作所が提供する高効率焼却炉が全国で活用され、ダイオキシン排出が大幅に削減されました。さらに、川崎重工業のバイオマス処理技術が注目され、廃棄物をエネルギー源として活用する取り組みが進行中です。一方、離島や地方では処理施設の整備が課題となっており、移動式処理技術の導入が模索されています。

まとめ
1999年の問題発覚から2020年代にかけて、日本の有害廃棄物管理は大きな進展を遂げましたが、輸出先国での処理体制や国内施設の整備など、依然として課題は残ります。政策の進化と技術革新により、持続可能な廃棄物管理の実現が期待されています。

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