### 北九州市響灘地区におけるPCB廃棄物処理事業の歴史
**事業の開始(2001年~2004年)**
2001年11月、北九州市響灘地区において、環境事業団(現・環境再生保全機構)がPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の処理事業を計画し、環境省から認可を受けました。PCBは変圧器やコンデンサーに使用されていた有害物質で、長期的な環境汚染リスクが指摘されていました。この事業では、溶剤洗浄や真空加熱分解を組み合わせた前処理技術や、液処理での脱塩素化分解技術が採用されました。施設は2004年に稼働を開始し、処理完了までに12年を要する計画でした。
**初期の成果(2004年~2010年)**
施設は計画通り稼働を開始し、九州や関西から搬入されたPCB廃棄物の処理が進められました。この期間中、響灘地区の施設は安全基準を満たしたモデルケースとして評価され、全国的なPCB処理の拠点となりました。
**処理期限延長(2010年~2024年)**
当初の予定では2014年度末までに処理を完了する計画でしたが、新たに発見されたPCB廃棄物や掘り起こし調査による追加廃棄物に対応するため、処理期限が2度延長されました。2019年3月末には、全国で初めて計画的処理対象である変圧器・コンデンサー約62000台を完了。2021年には、国からの要請を受け、北九州市は処理事業の継続を決定しました。
**操業終了と解体(2024年以降)**
2024年3月31日、JESCO北九州事業所は操業を終了しました。処理されたPCB廃棄物の総量は約10000トンに上り、国内外でPCB廃棄物処理の成功事例として評価されました。その後、施設の解体撤去作業が進行中であり、2029年度頃の完了を予定しています。撤去後は、土壌汚染調査と安全性の確認が行われる予定です。
**低濃度PCB廃棄物の処理(現在進行中)**
低濃度PCB廃棄物の処理については、全国31か所の認定業者が対応しており、北九州市戸畑区でも処理が進められています。この処理は2026年度末までに完了する予定ですが、製造過程で汚染された変圧器などの未処理量が膨大であり、処理完了には引き続き周知と努力が必要とされています。
**環境保全への寄与**
20年以上にわたり、北九州市響灘地区のPCB処理事業は、日本国内の環境保全に重要な役割を果たしました。この事業は、地域住民や事業者との連携を通じ、安全で確実な廃棄物処理を実現しただけでなく、将来的な環境リスクの軽減にも寄与しています。
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