絶滅危機植物の増加 - 1998年4月
国際自然保護連合(IUCN)が発表した「絶滅の恐れのある植物リスト」によると、世界中で約27万種の高等植物が確認されていますが、その13%にあたる約3万4000種が絶滅の危機に直面しているとされています。特に、380種はすでに絶滅しました。この中には、医薬品生産に欠かせない植物も含まれており、抗がん剤の原料として重要なイチイ属(主に北米・カナダに分布)の植物の75%が絶滅の危機に瀕しています。
具体例として、抗がん成分であるパクリタキセルが抽出されるイチイの絶滅は、米国の製薬大手ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol-Myers Squibb)などの医療分野にも影響を及ぼしつつあります。こうした絶滅危機種の減少は、エコシステム全体に深刻な影響を与え、各地で見られる生態系の変化が進行していることが指摘されています。例えば、アマゾン熱帯雨林に生息する約5,000種の植物が危機に直面し、土地の砂漠化や森林破壊によって年間約120,000平方キロメートルが失われています。
また、希少種の消失は生態系にとっても悪影響を及ぼします。インドネシアのスマトラ島やボルネオ島においても、パーム油の生産を行う企業、ウィルマー・インターナショナル(Wilmar International)の影響で、絶滅危機にあるラフレシア属の植物が減少しています。このラフレシアは世界最大の花を持ち、観光資源にもなっていましたが、栽培地の拡大によって生息地が減少しつつあります。
さらに、地中海地域では伝統薬として使われるアロエ・フェロックス(Aloe ferox)も絶滅の危機にある植物です。これらの植物は、収穫される量が多く、サプリメントとして利用されるアロエの供給量に影響を与えています。こうした植物の絶滅は、医療だけでなく、化粧品や食品業界にも深刻な影響を与え、欧州企業のユニリーバ(Unilever)やL'Oréalが新たな原料を求めて、研究を進めています。
これらの植物の危機的な状況は、単なる生態系への影響にとどまらず、各企業や産業にも波及し、持続可能な環境保護への取り組みが急務であると考えられています。
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